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辺縁異常 2. バリウムのはじき 3. ヒダの変化 4. 歪な陥凹 5. 領域を持つ粘膜模様の変化 前LP型癌拾い上げを睨んだ・・・ 6. 小さなニッシェ、である. |
これらの所見について、症例を提示し、解説する。 1. 辺縁異常 |
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Fig1 | Fig2 |
(Fig1)は、基準撮影法における背臥位二重造影正面位の画像である。この画像は、撮影順序1枚目であり 、検査序盤ということから、他の画像よりも、蠕動や十二指腸へのバリウム・空気の流出が少なく、辺縁 をチェックしやすいタイミングである。この画像では、体部大彎(枠ギリギリ)に見られる辺縁異常(二 重線)が指摘できる。実際の検査においても、同部位を気にして、この部位が正面視できるように、左側 臥位にて、追加撮影を行った(Fig2)。ご覧のように、歪な形の陥凹と周辺隆起が認められるが、隆起は陥 凹との幅や隆起の形に均一性がなく、陥凹の形状と合わせ悪性を強く疑う病変である。(結果:早期胃癌) |
2.バリウムのはじき |
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Fig3 | Fig4 | Fig5 |
(Fig3)は、背臥位二重造影第一斜位像であるが、異常は指摘しにくい。ここにバリウムを適量流してみると 、バリウムをはじく所見があることに気付く(Fig4)。その部位を意識して、体位変換し、造影効果を上げ 撮影したのが、(Fig5)であり、この画像では、陥凹と周辺隆起が認められるが、陥凹の形が歪。境界は、ギ ザギザとして、悪性を強く疑わせる。(結果:早期胃癌) |
3.ヒダの異常 |
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Fig6 | Fig7 |
ヒダの異常と言った場合、チェックポイントは複数あるが、透視観察では主に、ヒダ先の異常やヒダの走 行異常が、捉えやすい。(Fig6)を見ると、通常口側から肛門側へ走行する体部のヒダの中に、小彎から大彎へ 向けて走るヒダが、はっきり確認できる。このヒダ先に注目し、追加撮影をしたのが、(Fig7)である。この 画像を見ると、ヒダの先に陥凹があり、この陥凹に向かって、周囲のヒダが集中している。さらに、そのヒダ先の所見は、一様ではなく、陥凹境界で、削れているもの。陥凹境界付近で細まり、歪に途切れているも の。など、良性潰瘍瘢痕によく見られる丸みを帯びたなだらかな収束とは、かけ離れた所見が認められる。 強く癌を疑わせる所見である。(結果:早期胃癌) |
4.歪な陥凹 |
歪な陥凹とは、何を指しているかというと陥凹の形・面・境界が、良性潰瘍とかけ離れていることである 。(Fig8)は、当施設の任意撮影であるが、立位二重造影正面位やや前傾の画像である。見づらいが、画面中 央に星型の陥凹が認められる。しかし、背景を見ると、かなり付着ムラがあり、正しく病変を描出してい るのか信頼度に欠ける。再現性及び確かな所見を得るために、造影効果を高めつつ数回追加撮影をおこな った(Fig9)。この追加撮影から、異常所見を確信し、歪な形の陥凹ということで、癌を強く疑い精密検査と なった。(結果:早期胃癌) |
Fig8 | Fig9 |
5.領域を持つ粘膜模様の変化 |
癌は、粘膜に発生し、ある領域を持つのが特徴なので、これは理にかなった注目すべき所見ではあるが 、胃炎との鑑別が難しい。 |
Fig10 | Fig11 |
(Fig10)は、胃体部に椎体約2個分の大きさで、周囲の粘膜模様と明らかに違う領域が認められる。(Fig11) の通り、早期胃癌であった。 |
Fig12 | Fig13 | Fig14 |
(Fig12)は、同様に「領域を持つ粘膜模様の変化」があると判断し、癌を強く疑ったが、結果は胃炎であ った。1年後(Fig13)、2年後(Fig14)と、要精密検査判定であったが、結果は、胃炎であった。同様の症 例として、(Fig15)は、癌を強く疑ったが、結果は、胃炎であった。1年後(Fig16)、2年後(Fig17)とも精 密検査にて胃炎の結果であった。 |
Fig15 | Fig16 | Fig17 |
これは、「領域を持つ粘膜模様の変化」だけに当てはまることではなく、必ず例外は存在する。しか し、高率で癌を拾い上げているのも、事実であるので、透視観察のチェックポイントとしては、妥当 であると考えている。また、造影剤の付着を良好にし、境界の所見を明瞭に描出することで、見極め ができるという意見を聞くことがあるので、造影効果を高める必要があると考える。 |
6.小さなニッシェ |
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Fig18 | Fig19 | Fig20 |
(Fig18)は、背臥位二重造影正面位であるが、体部に小さなバリウムの溜まり(ニッシェ)がある。再現 性を確認するため、追加撮影をおこなった(Fig19)ところ、同様の所見を認めた |
Fig21 | Fig22 |
その後、更に追加撮影したところ、バリウムの溜まりは、単発ではなく、2つ並んであることがわかる (Fig20)。通常の良性潰瘍の典型ではない。比べると大彎側のほうが、バリウムが濃く溜まり、深さが一 様でないように思える。また、形も、円形・類円形と言った良性潰瘍の典型とは、かけ離れがある。少 し撮影時期が、ズレているためか、内視鏡像(Fig21)では、陥凹の周囲が、盛り上がっている。範囲を示 すことができないが、癌の範囲は、粘膜下にて側方浸潤し、想定よりはるかに広い領域に及んだ。最深 部は、漿膜下まで、達していた。ただ、StageⅡAと、予後については、期待のできる結果ではあ った。前LP型胃癌の症例と思われる。尚、LP型胃癌を早い段階で、拾い上げることを狙いとするな らば、F線内の小さなニッシェが、ターゲットとなる。 |
以上、私が考える透視観察のポイントを紹介したが、症例は、すべて陥凹型早期胃癌及び類似進行癌で ある。ポイントの中では、はじき像も含まれていたが、バリウムがはじくということでは、隆起所見を 示しているはずだが、この場合の隆起は、癌があるためにできる反応性の過形成などである。陥凹型早 期胃癌が伴うはじき像を説明すると、主に、 |
Fig23 | Fig24 |
陥凹内の顆粒状陰影(Fig23)と陥凹周囲の反応性隆起(Fig24)の2種類がある。どちらにしても、適度な バリウムの流れを透視観察することで、発見しやすい所見であるので、これを手がかりに、癌を発見 していただくことを期待する |
【所見の整理】 透視観察のポイントとして、紹介した所見を改めて、列記すると |
1.辺縁異常、2. バリウムのはじき、3. ヒダの変化、4. 歪な陥凹、5. 領域を持つ粘膜模様の 変化、そして、前LP型癌拾い上げを睨んだ6. F線内の小さなニッシェ、 |