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   平成21年 1月
  「X線診断学の成立する画像を求めて」―画像の精度向上のための工夫―                                   社会保険北海道健康管理センター 高橋伸之
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【はじめに】
X線診断学を成立させる画像とは「バリウムを介して、粘膜性状を極めて正確に描出させた画像」と理解している。言い換えれば、胃の粘膜にバリウムを付着させ、それをX線写真として鮮明に描写することであり、胃バリウム検査に携わる者にとっては常に目指し、かつ求められるところである。
画像という観点においては、機器管理の面においても工夫が必要だが、今回、指示された内容は「バリウム付着に対する手法」、特に「後壁のバリウム付着法」について日常取り組んでいるところを紹介することであったので、この趣旨に沿って話をさせていただく。尚、口述発表の際は、動画を使用し、バリウムの動きなどを提示した。

【内容】
胃壁にバリウムを付着させるためには、「関心領域に適正濃度のバリウムを多量に流すという行程を繰り返す」ことであろうが、そのためには台の起倒角度の調整と受診者による体位変換が一般的である。
しかし、ここで問題となるのは、体位変換を苦も無く行なえる受診者ばかりではないということである。特に体位変換が苦痛な受診者は高齢者に多く、しかも胃癌の罹患率が高い。そのような受診者に対し、体位変換をせずにバリウムを付着させる方法を示す。

【方法】
半立位~立位の状態で、正面を向き、体全体(特にお腹)の力を抜いていただく。主に胃角対側大彎辺りを軽く押す~放す。リズムカルに繰り返すことで、バリウム振動波が増幅し、胃壁の広範囲をバリウム波が覆うことになり、受診者は体位変換することなく、バリウムが粘膜に付着する。

動画であれば、バリウムが激しく動き、胃の粘膜にしっかり付着する様をご覧いただくことができるが、印刷原稿のため、バリウムの動きを示すことができず、残念である。以下に、前回画像との比較にて良好に付着することを示す。前回画像は、通常の体位変換にて撮影したものであるが、特に体位変換を苦にしている受診者ではない。

【画像の比較】
   前回画像    今回画像
   前回画像     今回画像
   前回画像     今回画像
 【検討】
やりやすい方   やりづらい方
・お腹がでている
・お腹が柔らかい
・男性
※まとめると、胃がんの罹患率が高く、体位変換が辛いという
高齢の太った男性が最もやりやすい
・痩せている
・お腹が固い。筋肉質。
・女性(撮影者が男性の場合)
利点  欠点 
・体位変換をせずに付着良好な像が得られる
(幽門前部~体上部=後壁)
・受診者と良好なコミュニケーションが得られやすい
 ・ゲップが出やすい
・撮影者が被曝する
※ゲップは出やすいが、近接操作にて適宜介助を
することで、高齢の受診者には大変感謝されるため、発泡剤の追加には寛大である。

【注意点】
欠点として指摘しているが、どうしてもバリウムの動きを確認したくなり、透視を出すために手指が被曝する。防護衣は言うまでも無く、必ず防護手袋も装着の上で、行なっていただきたい。



【まとめ】
今回紹介した手技は、大変有効であると思われるが、防護衣を着用していても、少なからず被曝する。あくまでも、体位変換が辛い方に限定して行うべきと考える。